ウェルビーイング内科クリニック船橋法典

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腎臓

論文発表 腎臓によるカリウム排泄のメカニズム

少し前の話になりますが、東京医科歯科大学腎臓内科に在籍時に当時の大学院生と一緒に進めていた研究が論文化されました。

Sodium-calcium exchanger 1 is the key molecule for urinary potassium excretion against acute hyperkalemia

PLoS One2020 Jun 30;15(6):e0235360.
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0235360

内容は基礎研究ですので、一般の方には難しいのですが、以下簡単にポイントだけ記載させていただきます。
血圧の調節には、食塩(ナトリウム)の摂取が重要ですが、それと同じくらいにカリウムの摂取が大切です。カリウムは野菜や果物に多く含まれていて、血圧を下げるためには野菜や果物をたくさん食べた方がいいです。
一方で、腎臓の働きが悪い場合は、カリウムをたくさん摂取すると体の中にカリウムが蓄積して、致死的な高カリウム血症から不整脈、突然死を起こすため、腎不全の方ではカリウムの制限が必要となります。
腎臓はナトリウムやカリウムの尿から排泄する量を調節することで、体内のナトリウム、カリウムバランスを整える重要な臓器です。
今回の論文では、培養細胞やマウスを用いて、カリウムを摂取した時に腎臓から速やかにカリウムを尿中に排泄するメカニズムを分子生物学的に明らかとしています。
腎臓でナトリウムとカリウムの調節を行うための鍵となるのは、ナトリウム-クロライド交換輸送体(NCC)というイオン輸送体です。NCCが活性化するとナトリウムを体にため込み血圧が上昇し、逆にNCCの働きを抑えるとナトリウムが体外に出ていくことで血圧低下が認められます。また、NCCの働きが抑えられると、尿中にカリウムをたくさん排泄することができます。カリウムをたくさん摂取すると、尿中にカリウムを排泄するためにNCCの働きが抑えられます。その結果、ナトリウムの再吸収も抑制され、血圧は低下傾向となります。
カリウムについて、高血圧との関連、腎臓における制御機構などについての総説も以前執筆していますので、ご興味のある方はこちらもご参照ください。

Clinical importance of potassium intake and molecular mechanism of potassium regulation

Clin Exp Nephrol. 2019 Oct;23(10):1175-1180.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31317362/

  • 高血圧には、ナトリウム(食塩)の制限と同じくらい、カリウム(野菜・果物)の摂取が大切。
  • 腎臓の悪い方(慢性腎不全、慢性腎臓病・CKD・透析など)の方は、腎臓からカリウムの排泄がうまくできないため、カリウム摂取の制限が必要。
  • 腎機能低下が軽く、血液検査でカリウムが高くない場合は、腎臓病があってもカリウム制限は不要。