ウェルビーイング内科クリニック船橋法典

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腎臓

腎性貧血内服薬 長期処方解禁

先日、ご紹介させていただきました新しい腎性貧血の治療薬のHIF-PH阻害薬について、保存期CKD患者さんに対して長期処方ができるようになりましたのでご紹介いたします。

これによってより多くの腎性貧血患者さんの治療に役立つと思います。

HIF-PH阻害薬については、以前の記事もご参照ください。

腎性貧血の新しい治療薬 HIF-PH阻害薬

 

 

HIF-PH阻害薬のロキサデュスタット(エベレンゾ®)は昨年11月より透析患者さんに限定され使用されていました。

今年11月より透析を行なっていない慢性腎臓病(保存期CKD)に対しても適応承認されました。

さらに12月1日より新薬の縛りである2週間処方が解除となり、長期処方が可能となりました。

また、前回ご紹介いたしましたバダデュスタット(バフセオ®)ダプロデュスタット(ダーブロック®)に加えて、エナロデュスタット(エナロイ®)が新しく販売となりました。これにより、HIF-PH阻害薬の選択の幅が広がっています。

 

長期処方のメリット

  • 腎性貧血の治療薬が長期処方可能となった意義は大きいです。
  • 従来、腎性貧血の治療は、赤血球造血刺激因子製剤 (ESA; Erythropoiesis-Stimulating Agent)、いわゆるエリスロポエチン製剤を注射する方法しかありませんでした。
  • ESA製剤の効果は2〜4週間しか持続しないため、ESA製剤を定期的に必要とする患者さんは2〜4週間毎の通院が必要です。
  • 腎性貧血治療中の方の中には、腎機能は悪いながらも落ち着いているが、腎性貧血の治療のために通院間隔を伸ばすことができない方もいます。
  • このような方でも、内服薬であれば2ヶ月程度の通院間隔に伸ばすことが可能になります。

※ 通院間隔は病状により主治医が判断するため、腎性貧血だけでは判断できません

※ HIF-PH阻害薬の切り替え後は貧血の程度の把握のため、血液検査が必要となるため、内服開始直後から通院間隔が延びることはありません。

  • また、注射がないということは、注射の痛みからの解放されるということや、診察終了後に注射を打つためにさらに待たされるということもなくなるというメリットもあります。

 

HIF-PH阻害薬のデメリット

  • では、現在ESA製剤で治療を行なっている腎性貧血患者さん全て内服薬に切り替えるべきでしょうか?
  • 以下、HIF-PH製剤への切り替え時に注意するべき点を記載いたします。

 

デメリット1 薬価

薬価はESA製剤の後発品と比較すると高めになります。

新薬ですので、もちろん後発品はありません。

通院頻度が減ることで診察料や交通費などの削減が可能な方は、多少の薬価の上昇は許容できると思います。

*開始用量について

  • バフセオとエナロイは、ESA製剤の使用の有無に関わらず初期投与量が同一です。
  • エベレンゾとダーブロックはESA製剤の使用の有無により初期量が異なります。また、開始容量を決めるにあたって参考となるヘモグロビン濃度や切り替え前のESA製剤が添付文書上に記載されています。
  • 比較すると開始用量の薬価は随分違いますが、効果の違いもあるため一概に高い安いという比較はできません。
  • ヘモグロビンの急激な上昇を懸念して比較的少ない用量から開始するか、多めから開始するかといった各社の考え方の違いがあるのかもしれません。エベレンゾは当初透析患者さんを対象としていたということもあるためか、開始用量は多めの印象です。

 

デメリット2 副作用の懸念

  • 日本腎臓学会から、「HIF-PH 阻害薬適正使用に関する recommendation (2020 年 9 月 29 日版)」が出されています。個人的に特に気になった部分を以下に抜粋いたします。
  • 投与開始前には悪性腫瘍の精査を行うことを推奨する。
  • 特に腎では適切な画像検査による投与前、および投与中の定期的な経過観察を行うことを推奨する。
  • 本薬剤を開始後には、定期的に眼科で網膜の状態について評価を受けることを推奨する。

このように悪性腫瘍および網膜出血の懸念が払拭されておらず、HIF-PH阻害薬を使用する場合は常にこのような点に注意が必要となります。

治療抵抗性の貧血がある場合は胃癌や大腸癌からの出血が原因であったなど、 HIF-PH製剤の使用の有無に関わらず、貧血の原因検索・悪性腫瘍について念頭おく必要があります。

我々のような一般内科診療所の場合は、CTや内視鏡、網膜の評価を行うためには、他院に依頼する必要があり、医療者・患者さんの負担を考えるとHIF-PH製剤を使用する敷居が高くなってしまいます。

長期使用成績によりこれらの副作用の懸念が払拭されることを願います。

 

デメリット3 内服が不規則

  • エベレンゾの内服は週3日のみです。

新しい腎性貧血治療薬の1つロキサデュスタットが長期処方可能となりました。

まだ慎重投与が必要ですが、保存期CKD患者さんには大きなメリットがあると思います。