新型コロナウイルスパンデミックの間は、「症状の軽い風邪症状は自宅で様子を見てください」、「コロナが疑われる方は一般外来を受診せず発熱外来を受診してください」という体制が定着していると思います。
社会活動の制限がなくなってから風邪をひく人も普通に増えて、インフルエンザの流行もあり、発熱外来はすぐに予約が埋まり、予約の電話も繋がりづらい、受診しづらいという状況が続いています。
そこで感じることは、風邪に対する誤解が多い、もう少し上手に医療機関を使ったほうがいいと思うことが多々あります。今回、風邪を引いたときの対処法についてまとめて書いてみました。風邪に対する正しい知識を身に着けていただきたいと思います。
風邪とは?
風邪は、ウイルスによって引き起こされる感染症の一種です。新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルスも風邪の一部と考えられます。
主に鼻やのど、気道などの上部呼吸器に影響を及ぼします。
ウイルス感染の特徴として、複数の症状を伴うことが多いです。咳、鼻水、喉の症状がそろっている場合は、風邪のことが多いです。
一方で、細菌感染は「原則として一つの臓器に1種類の菌が感染する」ので、一つの症状が強く表れやすいです。
日本における風邪診療に対する問題点
- 患者の医師依存度の高さ:
日本では医師の指示に従うことが一般的であり、自己判断でセルフケアを行うことが少ない傾向があります。そのため、風邪の軽い症状でも医師を受診するケースが多いです。
- 医療機関の過剰利用と負担:
軽い風邪のために病院を受診することで、医療リソースが過剰に消費され、本来の緊急性の高い症例への対応が遅れる可能性があります。また、病院を受診することで感染拡大リスクが高まることも懸念されます。
- 過剰な受診と抗生物質の不適切な処方:
日本では風邪の症状が比較的軽い場合でも、病院を受診し抗生物質が処方されるケースが多いです。しかし、風邪はウイルス感染症であり、抗生物質はウイルスに効果がないため、不適切な処方が問題となっています。
よくある風邪に対する誤った認識
- かぜをひいたら、医師の診察を受けるべきである。
→ 風邪は自然治癒する病気のため必ずしも受診は必要ありません。
- 病院に行けば、風邪かそれ以外かの判断がすぐにできる。
→ 病気の初期など症状が出ていない場合もあり、経過を見ないと判断がつかない場合も多いです。
- インフルエンザの場合、必ずインフルエンザ治療薬を飲む必要がある。
→ インフルエンザも風邪の一部であり、自然治癒します。
- かぜ薬を早めに飲むと早く治る。
→ 風邪薬の多くは症状緩和のための薬で、早く治す薬ではありません。
- 病院の薬の方が、市販薬よりよく効く。
→ 症状を緩和する薬(鎮痛解熱剤、咳止め、喉の炎症止めなど)に関しては、それほど変わりありません。
- 点滴や抗生物質を使うと早く治る。
→ 風邪に抗生物質は効きません。風邪に効く点滴もありません。(重症者に対する、点滴の解熱剤、抗インフルエンザ薬、脱水補正のために点滴を利用する場合はあります)
どういうときに病院を受診するべきか?
- 症状が重い場合(高熱、呼吸困難、意識障害など)
具合が悪い場合は、遠慮せず受診してください。
- 単一の症状が続く場合
喉の痛みだけ・咳だけ・高熱だけの場合は、風邪以外の病気が疑われます。ただし、風邪の初期では単一の症状のことは珍しくありません。
- 高齢者、糖尿病や癌など慢性疾患、免疫不全、乳幼児、妊婦など重症化するリスクがある場合
- 症状が改善しない場合。ぶり返した場合。
発熱・風邪診療における病院の役割
病院は、風邪の症状が重症化したり、合併症が生じたりする場合に備えて、専門的な医療ケアを提供する重要な役割を果たします。
- 症状の評価と診断: 患者の症状を詳しく聞き、必要な身体診察や検査を行います。風邪か他の病気かを見極めます。
- 重症化の評価: 風邪の場合でも症状が重症化すると入院治療が必要となります。重症度を評価し、適切な治療法を提供します。
- 必要な治療法の提供: 風邪の症状を緩和するための適切な治療法が提供されます。多くは解熱剤や咳止め薬など対症療法の薬だけです。疾患別に、抗ウイルス薬や抗生剤などが処方される場合もあります。
- 患者へのアドバイスと指導: セルフケアや予防策についてのアドバイスや指導が行われます。心配なことがあれば、相談にのります。
セルフケアの方法① 処方薬とOTC薬の違いについて
OTC薬(市販薬):
- OTC薬は、医師の処方箋なしに薬局やドラッグストアで入手できます。
- 一般的な風邪症状に対処するための解熱剤、鎮痛剤、咳止め薬、鼻づまり薬などが含まれます。
- 使用方法や用量などは、使用前に必ず確認して過剰に内服しないことが重要です。
- 薬局の薬剤師に相談できます。
処方薬:
- 処方薬は、医師の診察と処方箋が必要です。
- 解熱剤、鎮痛剤、咳止め薬など症状緩和の目的に処方される薬剤はOTC薬と遜色がない場合も多いです。
- 抗ウイルス薬や抗生物質を使用する場合は、処方箋が必要です。特定のウイルスまたは細菌に対して効果があり、医師の指示に従って使用する必要があります。
セルフケアの方法② 自己検査について
2024年2月現在、新型コロナウイルスとインフルエンザに関しては、ご自身で検査を行うことができます。
- 新型コロナウイルス抗原検査キット
- 新型コロナウイルスとインフルエンザの同時検査
(インフルエンザ単独の検査キットは自己検査が認められているものはありません)
検査キットはお近くの調剤薬局でお買い求めください。使用時は必ず【体外診断用医薬品】または【第一類医薬品】と表示のあるものをご使用ください。(【研究用】では診断はできません。)
※ 抗原検査は、検査の感度が低いため陰性でも新型コロナウイルス感染症を否定できるものでは有りません。特に、発症後時間が経っていない場合は、感度が悪いことが知られています。
【検査で陽性反応が出た場合】
病院で治療薬の処方や診断書が不要な場合は、自宅療養とすることも可能です。
治療薬が必要な場合は、症状に対する治療薬は薬局で購入可能です。
インフルエンザの治療薬が必要な場合は、オンライン診療で薬の処方することもできます。
新型コロナウイルスについては、抗ウイルス薬を使用せずに対症療法のみとすることが多いため、必ずしも病院の受診は必要ありません。
まとめ
風邪をひいた場合の対処法についてまとめてみました。
風邪の場合 病院を受診せずセルフケアも可能です。
発熱外来の予約が取りづらい場合も多いと思いますので、ぜひセルフケアもご検討ください。